EDIT
明治神宮前駅より徒歩5分。竹下通りを横目に、通称とんちゃん通り(原宿通り)に潜り込む。ここは数々のアーティストを輩出し、これからも生み出すであろう原宿エリアの、さらに奥深いところ。ファッション雑誌で特集される古着屋がひっそりと熱を帯びる通りを進むと、構造フレームをそのままファサードとした、ダイナミックな建物が姿をあらわす。
洒落たモペットを取り扱う1Fのバイクショップの脇を通り、外部階段で最上階へ。扉を開けるとそこには、澄み切った空間が広がっていた。ALCコンクリートの素材感を活かした壁面に、白く塗られた天井のデッキプレート。余計な装飾は一切なく、窓から射す光が唯一、白色の空間に柔らかな陰影を描いていた。天井高3M以上の100平米を超える空間は、光とあいまって開放感すら感じられる。ともすれば、ぼやけた印象にもなりそうなこの室内で、黒のガラスサッシと巨大なシャッターが空間を引きしめるかのように存在感を放っていた。
通りの裏手側の窓から見える街並みには、表参道のAoビルがシュールな様相で突き刺さる。
オフィスとして利用するにあたりまず問題となるのは、エントランスをどこに設けるかだろう。既存の鉄扉を出入口としてシャッターをインテリアと捉えてみるのも良いし、シャッターの背面に色気あるエントランスサッシを新設し、来訪者を招き入れるのも心持ちが良さそうだ。
おそらくこの空間づくりの鍵となるのは、照明配置だろう。ライティングレールを天井に走らせることで、照明は自由にレイアウトできる。スポットライトでワーキングスペースを照らし、打合せスペースにはペンダントライトを吊り下げて、シックな空間を演出してみてはいかがだろうか。
飾り気のないこの空間は、いわばまっさらなキャンバスと言えるかもしれない。0から1を生み出すことの面白さを知るクリエイティブに生きる人にとっては、想像力をかき立てられるに違いない。どのような構図で、どんな色に染めるか、自由に描き出していただきたい。この白い空間には、それを許容するだけの奥行きがある。
EDITOR’S EYE
床・壁・天井の素材を活かし、内装工事は水廻りとエントランス周辺の最小限にとどめることで初期費用は抑えられそうだ。飲食店舗を想定した給排水設備が整っているので、オフィス内にバーカウンターやカフェラウンジを設けることができるのも魅力の一つ。