EDIT
東京オリンピックで日本が湧いていた時代、暗渠化された渋谷川の上に作られたという通称キャットストリート。その名前の由来は諸説あるようだが、現在では多くのショップが軒を連ね、多くの若者が行き交う人気の高いストリートとなっている。そんな通り沿いの、ちょうど明治神宮前と渋谷の中間辺りに、モダニズム時代を彷彿させるレトロな建物が建っていた。その面立ちは周囲の中でも一際魅力を放ち、その建物の1階に見つけたこの空間も、ファザードに負けない輝きを放っていた。
前テナント退去時に、ただただそれまでの装飾を撤去しただけのスケルトンの空間。しかし、無計画とも言えるその内装は、実はあたかも計画されて作られたような絶妙な空間を生み出していた。コンクリート下地をあらわにした丸裸の状態だが、それぞれの面がちゃんと顔を持っており、幾度も手が加えられてきた年期の入ったその面立ちが、空間に良い色気を与えていた。これが今まで壁の中に隠されていただけとはなんとももったいない話だ。室内は2つのキューブが繋がったシンプルな形で、天高も3Mほどと高く、スケルトンではあるが空調やトイレも残されている。シンクなどはないので、こちらは必要に応じて設置してほしい。室内へのアプローチは正面の他に、裏の路地からも専有の入り口からもアクセス可能だ。それほど人通りのある通りでもないので、店舗などの集客力では弱いように感じるが、オフィスの場合ならそれほどマイナスにはならないだろう。むしろこっちをメインとし、アプローチを少し彩ってみてもいいかもしれない。いい面が目立つが、気になる点も1つある。日中の日当りはあまり期待出来ず、常に照明は必要となるだろう。しかし、照明計画を楽しむチャンスだと考え、空間の色気をより引き立てるプランニングをチャレンジしてほしい。シンプルな構成なので、色々とプランニングの幅も広がりそうな空間だ。
もし自分が借りると考えた時、なるべくこのままを活かした使い方を考えたいと思った。最低限の防塵塗装や照明器具の取り付けは必要だが、このまま荒々しい空間の中に、ザックリと家具や植物を置くだけでも自然と成り立ってしまうような気もする。現在設置されている蛍光灯では少々色気が感じられないので、照明で遊びつつ、空間にアクセントを与えてみるのは良いかもしれない。事務所はもちろん、店舗での利用も可能な物件なので、幅広めで様々な使い方を考えてみてはどうだろう。
EDITOR’S EYE
日中裏口の扉を開けて仕事していたら、路地を歩く猫がふらっと室内に入って来て、そこらでゴロゴロしていそうな部屋。もちろん猫だけではなく、近所で働く友達や仕事関係の人が、気兼ね無しにふらっと立ち寄れるようなオープンな環境が作れたら理想的だ。以前は飲食店が入居していたというこの区画。そのため、室内に残る匂いなどを少々心配しながら現地に訪れたが、室内には全く匂いも残っていなく、程よいコンクリートのニオイ意外はほぼ無臭という状態だったのでそこも安心してほしい。