EDIT
明治神宮前交差点、その中でひときわ存在感を放っている東急プラザ。この裏手の道は、表通りの人の多さには正直バテてしまうという人にはちょうど良いかもしれない。といっても人通りが少ないという意味ではなく、このあたりは以前こそターゲット層がかなり絞られている節があったものの、近ごろは人気の卵専門の飲食店ができたり、大人の落ち着きを見せるライブレストランがあったりと、より多くの需要を受け入れる通りに変化しつつある。その昔、プロペラ通りと呼ばれたそんな裏道に佇む今回の建物は、1棟まるごと募集中の物件である。
人通りが確保されている商業性の高いエリアだけあって、賃料は安くはない。ショップやショールーム、ギャラリーなどの目的に合う物件だ。
前入居者のクセのある外観は自分好みに一新頂くとして、建物外観の側面にある、深みある色合いの青い意匠壁は、色を黒や白などに塗り替えて袖看板代わりに利用するのもいいだろう。袖にあるキャバレー風のランプが意外と良い演出をしてくれるのでうまく活用してほしい。
建物の全貌としては、B1Fから2Fまでプラス屋上付き。まず、1F路面の正面には入口がふたつ。奥まったところに位置する一方の入口は、元ヨガスタジオだった明るい地下空間へと導く。この区画は、なかなか天井が高く、地下といえども明るいので、1F、2Fをしっかり店舗として利用しつつ、地下を贅沢な立地のバックオフィスという利用方法も可能だ。
通りに面した1Fの区画に関しては、元アパレル店舗の造作が多く残っており、ここもかなりPOPな印象だが、天井が高く空間のポテンシャルは高いため、ガラッと雰囲気を変えて品のある空間に仕上げてみていただきたい。
2Fに上がると、こちらは至ってシンプルな空間。天高は裕に3mはあるだろう。両面の大きな窓から光が抜けることで、すでに高い天高をさらに高く感じさせているように思う。そして階段はまだ続き、建物最上階にはルーフトップが待ち構えていた。ふつうの屋上とは一味違い、数段だが段差がある。この段差が空間に立体感を出し、いつまでもここに居たくなるような独特の居心地のよさを作り出す。思わずここに腰をおろしたくなり、ビール片手に他愛ない会話を誰かと共有したくなるようなスペースだ。
ショップやギャラリーといえば、ふつう夜のクローズ後はその空間を持て余してしまう。商業性の高いエリアではなおさら、使わない時間があるのはもったいない気がしてしまう。ならばここでは、お店がクローズした後は、昼間は地下でこつこつと働いていたスタッフが、上に上がってフリーアドレス的に利用したり、人を呼んでプチイベントを開催したりできるような、そんなフレキシブルな空間づくりにチャレンジしてみてはいかがだろう。オープン中は店舗として利用し、クローズ後にはまた別の役割を与える。昼夜を問わず、時間によって変化する働き方で、この1棟まるまるの物件を自分好みに遊び尽くしてほしい。
EDITOR’S EYE
2Fから屋上への階段は、普段はその贅沢な横幅を持て余してしまっている気がするので、例えばその段差の片側は本棚代わりに、お洒落な魅せる収納とするのはいかがだろう。もしくは、下に垂れて育ってゆく植物を配置して、階段緑化計画というのも悪くないかもしれない。