EDIT
日本のファッションカルチャーの最先端を突き進む表参道・青山エリア。常に新しいトレンドを生み出し発信していくこの街に、一つの栄光の時代に終止符をうち、また次の時代へ歩み出そうとする物件を見つけた。表参道駅を背に、青山通りを外苑前まで歩むちょうど中間地点。目印は歩道橋のこれとない立地に、この物件は潜んでいた。
十数年、このエリアのダンスシーンを牽引してきたクラブの跡地が今回紹介する物件となる。黒く塗装された、いかにもという外壁の重厚な扉を開ける。1階にはエントランス回り、その先の回り階段を下りた先にメインの箱があった。写真のとおり、室内は退去したばかりの居抜きの状態で、なかなかラグジュアリーな内装のままだ。このままこの内装を引き継いだ使い方を!と、提案したいところではあったが、残念ながらこの内装を全て取払い、まっさらなスケルトン状態で引き渡しとなるようだ。せめて水回りなどは残して欲しいところではあったが、恐らくそれも叶わない。装飾や家具などで現在の雰囲気を作っているので、スケルトンの状態がまだまだ想像しにくいところだが、光るポテンシャルはひしひしと感じる。
比較的ボリュームの取れたワンルーム空間や、3Mは裕に越える高い天井。壁などが取り外されれば、より空間の広がりを感じるだろう。1階エントランス部のサイズ感や吹き抜けた階段ホールは、色やライティングなどでも様々な表情に化粧映え出来そうだ。地下なので窓はない。もちろん光も入らない。だが、裏を返せば十分な壁面積を確保しているので、その壁をふんだんに使った内装も魅力的だ。もちろん音出しはまったく問題無いだろう。もし店舗を併設した事務所といった使い方を考えているならば、小ぶりだが1階の隣区画も募集している。以前はカラオケとして使用していたようだが、そこを事務所に、メインの店舗はこの空間を使うと良いだろう。もちろんいい面だけではない。青山通り沿いにある建物だが、この区画へのアプローチは建物サイドを奥に進んだ、建物脇にある。よって商業的なアプローチとしては少々弱めな物件だが、ストーリー性を高めれば、プラスに変えることも出来るかもしれない。1から空間を作らないといけない為、かなり手がかかる空間ではあるが、次のカルチャーを生み出すチャンスを与えられたと考えると楽しみな物件でもある。
EDITOR’S EYE
これまで多くの人々が出会い、音楽を楽しみ、恋をしてきた空間。残念だがその空間も取り壊され、まっさらなスケルトンとなってしまう。しかし、この空間やストーリーを作り上げてきた人々に敬意を払い、今後なにかしらの形でそのストーリーを引き継いでいって欲しい。様々な店舗要素に答えられる物件だが、青山通りを歩く人々の引き込み力は弱いように感じる。だが、逆に一度入ってしまえばその空間にどっぷり浸からせてくれる力もある空間と言えるので、強い個性を持ったストーリーをこの物件の為に考えて欲しい。