EDIT
都心へのアクセスが抜群な立地にも関わらず、閑静な住宅街が広がる代々木上原。周囲には隠れ家的なレストランや小洒落たカフェなども多く、アパレル事務所やデザイン会社など、感度の鋭いオフィスが多く集まるエリアでもある。また、都内でも有数な高級住宅地という事もあり、街を歩けば品のある建物が多く見受けられる。今回紹介する物件も代々木上原駅から数分ほどにあるモダンな高級レジデンスといった建物で、その中にはシンプルながらもデザイン性のあるコンクリート空間が広がっていた。
玄関扉を開けると、奥行きのあるメゾネットタイプの空間が現れた。南に面する大きな吹き抜け空間を通して日中多くの光を取り込み、日々気持ちよく働かせてくれそうな空間となっている。1層目は縦長の空間とコンパクトなバルコニー、玄関脇にはキッチンと、その奥にはトイレもついており、この階だけでも十分事務所として完結してしまう作りとなっている。存在感を放つスチール製の黒い階段は、シェルフのように本や雑貨など収納する事も可能な、現代風の箱階段といったものか。なにかと便利な面もあるが、それぞれが個別に設置されているため、本来の機能としての上り下りの際に若干の不安を感じさせる。慣れは必要だろう。上階には、コンパクトだが休憩などに良さそうなスペースと、オープンすぎるバスルームも付いている。夏など汗をかいた際に使用も可能だが、日中みんなが働く場で入るにはハートの強さが必要だ。さらに壁面の開口からは外へ出る事も出来る。外には大きめのルーフバルコニーが広がっており、見渡す風景の半分以上が空という、都内では珍しい魅力的な風景が広がっていた。これを住居として住んできた人に、沸々と嫉妬心を覚えるとても贅沢な空間だ。
海外の大手企業のように、オフィス内にオンとオフを切り替えられる空間があっても良いのではないかと思う。例えばバリバリ働くワークスペースを下の階に詰め込み、上の階はラウンジのように遊びを楽しむ空間に。ベーシックにソファーやロッキングチェアーを置くのもいいが、大画面のテレビゲームや卓球台なんて離れ技も考えられる。天気のいい日にはパラソルを広げ、ルーフトップでサンバスを満喫し、夜は夜景を見ながらオシャレなルーフトップバーを楽しむ。もちろんスペースとしてはとてもコンパクトで、声は下まで筒抜けとになり、明確に空間を分ける事は出来ないが、少しでも気を抜ける空間をオフィスに作ってはみてはどうだろう。都心から少し離れた静かな代々木上原という環境にあるからこそ、バリバリ働く事だけじゃないオフィスの楽しみを作っていってほしい。
EDITOR’S EYE
この区画はエレベーター無しの4F部分となるので、階段でのアクセスと体力が必要となる。しかしただ階段をぐるぐる上るのではなく、美術館にありそうなオシャレな階段室を抜けたり、鉄骨の渡り廊下を渡ったりと、アプローチを楽しませてくれ、自然と辛さは感じなかった。郵便配達員も安心の作りとなっている。