EDIT
国際的なコンテンポラリーアートを多く展示するワタリウム美術館。スイスの著名建築家がデザインした有名な建物で、キラー通りの一つの顔とも言える存在だ。そんな美術館のすぐ裏に、周囲の建物にひっそりと隠れるよう佇む今回の建物。こちらも著名な建築家がデザインした建物で、黒い奇抜なフォルムが特徴的なデザイン。建物からは石張りの階段が一直線に伸び、それを登った先に今回の物件はあるが、この階段も部屋のインテリアの一部のような存在だ。ストイックなデザインの建物だが、内部にもそれに負けない空間が眠っていた。
長方形の露骨なコンクリート空間の中に、水回りを収納した黒い壁が斜めにスッと伸びる。小振りなコンクリート空間は、通常なら空間に圧迫感を与え易い仕上げだが、この部屋は3mの天高のおかげで、そんな不安を見事に消し去っている。また、この黒い壁が空間をギュッと引き締めている。この色が入るのと入らないとではだいぶ空間の印象が変わっていただろう。なんとも優秀なセレクトだ。写真を見て分かる通り日当りも良好で、南面の大きな窓からは十分すぎるほどの光が射し込む。窓からは遠くの風景まで見渡せ、疲れた時にはコーヒー片手にボーっと眺めているだけでも心が癒されそうだ。水回りや設備もなども、この部屋のサイズに合わせて使い易いよう計画されている。全体的にコンパクトだが、その分入念に計画された、なかなか抜け目の無い空間だ。
長方形の空間なので、壁に添って作業用の横長のテーブルを置き、窓面には打ち合わせ用のテーブルを置くようなレイアウトがベストだろう。むしろそれ以外のレイアウトはあまり考えにくいので、もし個性を主張するなら、家具や照明あたりを攻めるべきか。家具は室内の色合いに合わせてモダンな色味をセレクトもいいが、木の質感や、少し色味のある家具も部屋の印象をガラッと変えて面白そうだ。間接的なスポットライトが壁面に設置されているが、メインの照明はソケットのみが残されているので、天高を生かしてペンダントライトを垂らすといい。このままでも十分面白い空間だが、より自分らしいコーディネートで着心地の良い空間に仕上げて欲しい。
EDITOR’S EYE
少々高めの賃料設定に思えるが、建物のデザインや印象、空間とのバランスを考えると、それほどパフォーマンスは悪くは無いように思える。直接アクセス出来る階段や、入り口がガラス戸になっているので、商業性も十分あり、通常の事務所はもちろん、小さなショールーム兼ワークスペースにしても良さそうだ。なかなか希少な物件だと思うので、気になる方は早めに見て欲しい。