EDIT
渋谷駅から246号線を三軒茶屋方面へ進む。セルリアンタワーを越え南平台の交差点を曲がると、そこから代官山までは、教会や大使館もある閑静な住宅街が広がる。交差点から少し入った辺りのマンションの一室が、今回の募集物件だ。
ヴィンテージ感が漂う1963年築の建物。ただ築年数を重ねているだけでなく、味や風格の様な物がしっかりと感じられる。エントランスを入りそのまま廊下を行くと、このリノベーションされた区画がある。水回りは新しく、壁や梁はペンキが直塗りされており、天井はコンクリートの躯体が見える。床はフローリングといってもワックスがけをしたつやつやした物ではなく、ナチュラルな木の雰囲気を残した物だ。意図的かどうかは定かでないが、建物のありのままの姿や質感を味わえるのが素敵だと思った。そして何となく珈琲の深煎りを思い描いてしまった。深煎りは確かに苦いのだが、焙煎される間にカフェインが徐々に少なくなり、実は浅煎りよりも胃に優しく、甘味すらあるという。この空間も、時間を隔て入居者が変わるうちに、本来のかっこよさが自然に見えるようになり、居心地の良さが増していったというところだろうか。新しい物にはない風味というのは、時間と人の手によって造られるのだと感じた。間取りはやや凹凸があるが、仕切りのないストレートなワンルーム。このあとは是非、あなたの加減で好みの空間に焙煎して頂ければと思う。
EDITOR’S EYE
床にはコンセントも埋め込まれており、オフィスとしての機能性は高いといえる。広めのベランダは手つかずの状態だが、少し手を加えれば、室内と同じ位過ごしやすい場所になりそうだと思った。