EDIT
外苑前駅から、ベルコモンズの交差点を右へ曲がる。輸入家具メーカーのショールームや有名フラワーショップなどが建ち並ぶ外苑西通りは、近隣の青山通りと比較すると、すこし文化的な雰囲気があるように思う。近代美術の展示で有名なワタリウム美術館の少し手前あたりに、コンクリート造のこの建物を見つけた。
設計者はこのビルのオーナーと個人的にお付き合いがあった、日本を代表する建築家。表立って作品としてこのビルの名前があがることは少ないが、言われてみて「なるほど」と思うような、その建築家らしいファザードをしている。かなり落ち着いた配色なのに、通りを歩いていて目を引くデザインはさすがだと思う。募集しているのは2階部分。V型に切れ込んだ大きな窓が通りに面しており、ビル上方の正方形の窓との対比が面白く見える。室内はスタンダードなオフィスフロアであるため、外観に負けないかっこいい空間を作るには、少々手を入れる必要があるだろう。その際は、設計者が喜ぶような少々奇抜な内装を施したとしても、この建物にはしっくりくるのかもしれない。なお、通りからの視線は大きなガラス窓にかなり集まると思われるため、そこだけは通りを歩く人、走る車を意識した、素敵なウインドウにしてもらいたい。
都心にいると意外と身近に、国内外の素晴らしい建築家の作品があることに気づく。出会ってしまったからには、この様な作品の中にオフィスを構えてみたいと思うのは私だけだろうか。入居することで、天才といわれる人たちの目線に、少し近づけるような気がしてしまうのだ。
EDITOR’S EYE
ベルコモンズの取り壊しが決まり、外苑西通りの雰囲気も変わっていくのかもしれない。しかし、良いものというのは建物に限らず、ワインやデニムのヴィンテージのように希少価値が高まり、時代を経るごとに愛されるのだろう。この建物も例外ではないような気がした。