EDIT
恵比寿ガーデンプレイスを抜けて住宅街に入る。恵比寿と広尾、そして白金台のほぼ中間地点に位置するこのあたりは、昔からこの地にある住まいが多く、非常に落ち着きのある街だ。その住宅の合間に新しいオフィスビル、レストランやサロン、撮影用のハウススタジオなどが点在している。そんな住宅街の中でこの独特なドーム状の物件を見つけた。
上階は居住用と一部オフィスになっており、今回は1階部分の募集である。個性的な外見で視認性は高いが、コンクリートと開口部のガラスが交互に配置されたデザインは街並みから浮くことはなく、ちょっと気になる存在、といった印象を与えるだろう。室内は整った形をしているわけではないが、工夫を凝らしてレイアウトを考えるという楽しみがあり、特徴的な窓も複数あることから空間自体に面白味もある。建物全体に連続して設けられている三角形と円形の窓はこの建物のシンボルでもあるので、室内でもうまくデザインに組み込んではどうだろうか。設計を担当した建築家は、「窓と壁を対等に扱い、外と中の境界線を曖昧にすることで居心地の良さをデザインした」という。そんなちょっと知的なこの物件には、少し丁寧に手を加えてあげてほしい。例えば天井と壁はすべて白にして、床を質感の高いのフローリングにする。建築家の意図をくみとり、無機質というよりは、ぬくもりや、気取りのなさを大切にするインテリアが似合うと思った。余計なものはおかず、本当に必要なものだけをそろえた場所。何にもとらわれず、ただここで気分よく働く、理想のワークスペースとはそうゆうものかもしれないと思わせてくれる物件であった。
EDITOR’S EYE
近頃はオフィスや店舗に赴かなくてもすんでしまうことが多く、便利だとは思う。しかし、訪れること自体に楽しみがあり、そこで過ごす時間が自分らしくいられる、そんな空間があってもいいのではないだろうか。住宅街の中のこじんまりとしたこのスペースには、それを実現できるようなポテンシャルを感じた。